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用語集

新株予約権(ストックオプション)と社内起業家インセンティブ|カーブアウト・出向起業の株式設計

新株予約権 とは、あらかじめ定めた価額(権利行使価額)で会社の株式を取得できる権利を指す会社法上の用語であり、ストックオプション はそのうち取締役・従業員などへ報酬・インセンティブとして付与される一類型を指す実務上の呼称である。両者は法的根拠を同じくし、ストックオプションは新株予約権に包含される関係にある。大企業発の新規事業——とりわけカーブアウト出向起業——では、社内起業家にどのような株式インセンティブを設計するかが、人材の確保とリスクテイクの意欲を左右する中心的な論点となる。

新株予約権とストックオプションの関係

新株予約権は、株式を一定の条件で取得できる権利の総称として会社法に規定されている。社債と組み合わせた資金調達(新株予約権付社債)、買収防衛策、コンバーティブル・エクイティなど用途は幅広い。このうち、会社の役員・従業員などに対して労務の対価として付与されるものがストックオプションと呼ばれる。

実務上の差は、付与の目的と手続きに表れる。役員にストックオプションを付与する場合は、新株予約権の発行決議に加えて、会社法上の報酬等の付与として株主総会の決議を要する。つまり「新株予約権の発行」と「報酬としての付与」は別個の意思決定として整理される。

税制適格ストックオプションの要件

ストックオプションは税務上の扱いによって、税制適格税制非適格に大別される。税制適格ストックオプションは、権利行使時には課税されず、取得した株式を売却した時点で譲渡所得(分離課税)として一括課税される点に最大の利点がある。これに対し税制非適格の場合、権利行使時に給与所得として課税され、総合課税で最大の限界税率が適用される。

税制適格となるための主な要件は、租税特別措置法に定められている。無償で発行されること、権利行使価額が契約締結時の株式の時価以上であること、権利行使期間が原則として付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日までであること、譲渡が禁止されていることなどが含まれる。設立5年未満の非上場会社では、権利行使期間の上限が15年まで延長される(令和5年度=2023年度改正による拡充)。

2023〜2024年の制度改正

ストックオプションを巡る税制・運用は、2023年から2024年にかけて大きく動いた。

信託型ストックオプションへの課税見解(2023年)。 国税庁は2023年5月、信託型ストックオプションについて、権利行使時に給与所得として課税する旨の見解を「ストックオプションに対する課税(Q&A)」で示した。それまで一部で譲渡所得として扱われていた前提が覆り、多くの導入企業に影響が及んだ。税制適格要件を満たさないストックオプションは権利行使時に給与所得として課税されるという原則が、この時点で改めて明確化された。

権利行使価額の明確化(2023年)。 同年の通達・Q&Aにより、非上場株式の権利行使価額の算定方法が整理され、純資産価額方式が原則的な算定方法のひとつとして示された。

年間権利行使価額の限度額引き上げ(令和6年度=2024年度改正)。 令和6年度税制改正では、年間の権利行使価額の限度額が引き上げられた。従来は一律1,200万円であったが、設立5年未満の株式会社は2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場または上場後5年未満の会社は3,600万円まで拡大された。企業価値が高まった段階でも優秀な人材を確保しやすくする狙いがある。あわせて、社外高度人材への付与要件が緩和され、発行会社自身による株式管理スキーム(証券会社等への保管委託に代わる選択肢)が創設された。これにより、非上場会社のM&A時に税制適格要件を満たしやすくなった。

カーブアウト・出向起業における設計論点

大企業が新規事業を切り出すカーブアウトでは、新会社の経営を担う社内起業家に対し、新株予約権を通じた株式インセンティブを付与する設計が検討される。本体に残るより新会社に挑む動機づけとして、エクイティの上振れ余地を提供する狙いである。ただし設計には固有の制約が伴う。親会社が新会社の株式の大半を保有する段階では、付与できるストックオプションの希薄化余地が限られ、税制適格要件のうち「契約締結時の時価以上」という権利行使価額の条件が、評価額の算定方法に左右される点も実務的な論点となる。

経済産業省が令和2年(2020年)度に開始した出向起業は、大企業に在籍する人材が所属企業を辞職せず、自ら設立したスタートアップ等へ出向する形で新規事業を行う仕組みである。出向起業補助金では、新設企業の議決権に占める出向元企業の比率が20%未満であることが要件とされており、起業した人材自身が経営の決定権を確保できる構造となっている。本人が新会社の株式を保有しうるため、新株予約権による追加的なインセンティブ設計と組み合わせる余地がある。なお出向起業補助金そのものは年度ごとの公募制度であり、付与時の評価額や税制適格要件の充足は、個別の資本構成に応じて専門家による確認が必要となる。

設計上の留意点

社内起業家への株式インセンティブを設計する際は、税制区分(適格/非適格)の選択、ベスティング(権利確定)スケジュール、離脱時のクローバック条項、希薄化管理を一体で検討する必要がある。税制適格要件は租税特別措置法の改正により継続的に変化しており、ここで示した数値は2024年度改正時点のものである。実際の制度設計では、最新の法令・通達と個別の資本構成に基づき、税理士・弁護士による確認を前提とすることが望ましい。

関連項目

参考文献・出典

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