人物概要
深堀 昂(ふかぼり あきら)は、avatarin株式会社の代表取締役CEOである。ANAホールディングス出身のイントラプレナーであり、アバターロボットを活用した「瞬間移動」インフラの構築という壮大なビジョンを掲げ、航空会社発のスタートアップとして世界的に注目を集める存在である。
「世界人口の94%は飛行機に乗れていない」という事実に衝撃を受け、物理的な移動に依存しない新たな移動体験の創造に人生を捧げることを決意した。ANAグループ初のスピンアウト企業を率いるリーダーとして、ロボティクスとAIの融合による次世代モビリティの社会実装を推進している。
経歴・実績
2008年、全日本空輸株式会社(ANA)に入社。運航技術や空港オペレーションなどの現場業務を経験する中で、航空業界の構造的な課題と向き合うことになる。飛行機による移動は世界人口のわずか6%にしか利用されておらず、残る94%の人々は距離や経済的制約により移動の恩恵を享受できていないという事実に深い問題意識を抱いた。
2016年、この課題意識を行動に移すべく、XPRIZE財団が主催する国際コンペティションに挑戦。ANA社員として「ANA AVATAR XPRIZE」というコンセプトを提案し、アバターロボットを通じて人の意識・存在感を遠隔地に送り届けるというビジョンを示してグランプリを受賞した。この世界的な評価が社内での求心力となり、ANAグループにおけるアバター事業の本格的な事業化プロジェクトが始動する契機となった。
さらに注目すべきは、深堀がXPRIZEでの受賞実績だけでなく、ANA社内における粘り強い説得と組織づくりを通じて、航空会社という保守的な業界の中からまったく新しい事業ドメインを切り拓いたという点である。社外で実績を積み、その成果を梃子にして社内の意思決定を動かすという手法は、大企業における新規事業推進の有効なアプローチとして多くのイントラプレナーの参考になっている。
現在の職務・プロジェクト
2020年4月、ANAホールディングス初となるスタートアップ企業「avatarin株式会社」を設立し、代表取締役CEOに就任。コーポレートベンチャーの枠組みの中から生まれた企業でありながら、独立した経営判断とスピード感を持つスタートアップとして運営されている。
主力プロダクトであるアバターロボット「newme(ニューミー)」は、遠隔地にいる操作者の「存在感」を物理空間に届けるデバイスである。ディスプレイとカメラ、マイク・スピーカーを搭載した自走式ロボットを通じて、自宅や病院にいながら観光地や職場、学校に「瞬間移動」する体験を提供する。
事業の成長性と社会的インパクトが高く評価され、ソフトバンクをはじめとする投資家から累計77億円の資金調達を実現。ロボティクスと生成AIを掛け合わせた独自プラットフォームの開発を加速させ、国内のみならずグローバル市場への展開を強力に推し進めている。
観光・教育・医療・介護など、多様な産業領域でのアバター活用を推進しており、自治体や企業との実証実験を通じて「アバター社会インフラ」の構築に向けた着実なステップを踏んでいる。
思想とアプローチ
深堀の思想の核心は、「移動の民主化」である。航空会社の社員として世界中の移動ニーズを見てきたからこそ、「飛行機に乗れない人」にこそ移動の価値を届けたいと考えた。身体的制約や経済的制約、地理的制約によって移動を諦めている世界中の人々に、アバターという新しい手段で「どこにでも行ける自由」を届けることが使命であると語る。
「人は移動するのではなく、体験を求めている」という本質的な洞察に基づき、物理的な肉体の移動ではなく、人の意識・技能・存在感そのものを遠隔地に伝送するという発想の転換を行った。航空会社という「移動」の本丸にいたからこそ到達できた逆説的なビジョンであり、大企業の中で培った業界知見がイノベーションの源泉となった好例である。
加えて、深堀は「アバターは単なるロボットではなく、人と人をつなぐインフラである」と位置づけている。高齢者や障がい者の社会参加、遠隔地医療、災害現場の調査、教育格差の解消など、アバター技術がカバーしうるユースケースは極めて広範であり、航空産業に匹敵する新たな「移動」市場の創出を構想している。