人物概要
森 庸太朗(もり ようたろう)は、株式会社ストリーモの代表取締役CEOである。本田技研工業(Honda)出身のモビリティエンジニア兼起業家であり、独自のバランスアシスト技術を搭載した電動三輪マイクロモビリティ「Striemo」の開発者として知られる。
Hondaの新事業創出プログラム「IGNITION」発のベンチャー企業第2号としてスピンアウトを果たしたイントラプレナーであり、「すべての人が自分のペースで移動できる社会」の実現を目指している。
経歴・実績
本田技術研究所に入社後、二輪車から四輪車まで幅広い乗り物の開発プロジェクトに従事。Hondaが長年培ってきた車体設計やエンジニアリングの知見を深く吸収し、特に重心バランスの最適化や車体安定性に関する高度な専門性を身につけた。0.1mm単位で重心位置を計算する緻密な設計技術に精通しており、この技術力が後のStriemo開発の礎となっている。
開発者としてのキャリアを積む中で、「高齢者や身体に不安を抱える人々が、安心して外出できるモビリティが存在しない」という社会課題に強い問題意識を持つようになる。電動キックボードは若年層向けであり転倒リスクが高く、シニアカーは速度が遅すぎて生活圏が限られる。この「移動の空白地帯」を埋める新たな乗り物を自らの手で作りたいという使命感が、社内起業への挑戦を後押しした。
Honda社内で同じ志を持つ仲間と出会い、IGNITIONプログラムへの応募を決意。提案した電動三輪モビリティのコンセプトが高く評価され、事業化の切符を手にした。Hondaが二輪・四輪で蓄積してきた車体安定性技術や人間工学の知見が、Striemoの核心的な差別化要因として活かされている。
現在の職務・プロジェクト
2021年、Hondaの新事業創出プログラム「IGNITION」を通じて共同創業者と共に「株式会社ストリーモ」を設立し、代表取締役CEOに就任。千野歩が率いるAshiraseに続く、IGNITIONプログラム発のベンチャー企業第2号である。
主力製品「Striemo」は、独自開発の「バランスアシスト機構」を搭載した1人乗りの電動三輪マイクロモビリティである。歩行速度(時速約4km)から自転車並みの速度(時速約20km)まで、転倒しにくく安定した走行を実現する点が最大の特長である。従来の電動キックボードでは不安を感じるユーザー層、特に高齢者や運動に不安のある人々にも安心して利用できる設計となっている。
三輪構造による物理的な安定性に加え、独自のジャイロセンサーと制御アルゴリズムがリアルタイムで車体のバランスを補正する仕組みを採用しており、停車時にも自立するため、乗り降りの際の転倒リスクも大幅に低減されている。
立ち乗りスタイルでありながら三輪構造と独自の制御技術により高い安定性を確保しており、高齢者の外出支援や観光地でのラストワンマイル移動、工場や倉庫内での業務用途など、多彩なユースケースでの実証実験と販売展開を国内外で推進している。「Striemoによって世界中の人の暮らし・移動を豊かなものにする」というミッションのもと、海外市場への進出も視野に入れた事業拡大を進めている。
思想とアプローチ
森のアプローチの根底にあるのは、「移動の自由はすべての人の基本的権利である」という信念である。加齢や身体的制約によって行動範囲が狭まることは、生活の質(QOL)の低下に直結する。この問題に対して、テクノロジーの力で「移動のバリア」を取り除くことが自身の使命であると語る。
Hondaのエンジニアとして叩き込まれた「人間中心のものづくり」の哲学は、Striemoの設計思想にも深く根付いている。スペック上の性能よりも、乗る人が「怖くない」「楽しい」と感じられる体験設計を最優先し、ユーザーテストを何百回と繰り返しながら製品を磨き上げてきた。大企業の中で培われた技術的蓄積を、社会課題の解決という文脈で開花させた好例である。
さらに森は、「モビリティは単なる移動手段ではなく、人の行動範囲と生活の質を決定する社会インフラである」と捉えている。超高齢社会を迎えた日本において、高齢者が免許を返納した後も自立した移動を続けられる手段を提供することは、社会全体の持続可能性に関わる重要な課題であり、Striemoはその解決策の一つとなることを目指している。