ソニーグループ
Sony Group Corporation
「自由闊達にして愉快なる理想工場」を原点に、PlayStationからSSAP、AFEELA、宇宙事業まで、感動(KANDO)を軸にした事業創造を続けるクリエイティビティとテクノロジーの融合体。
企業概要
- 企業名
- ソニーグループ
- 業種
- エレクトロニクス / エンタテインメント / 金融 / モビリティ / 宇宙
- 所在地
- 東京都港区
- 創業
- 1946年
- 公式サイト
- www.sony.com/ja
新規事業の歴史
History & Evolution
創業(東京通信工業)
「自由闊達にして愉快なる理想工場」を掲げ、戦後の日本に技術で感動を届ける。
ウォークマン 発売
「音楽を外に持ち出す」という新しい文化を創出。ライフスタイルの再定義。
SCE(現SIE)設立
玩具とみなされていたゲームを「3DCGの総合芸術」へ。出島戦略の極致。
初代 PlayStation 発売
技術者・久多良木健の執念が実り、ソニーをコンピュータとソフトの会社へ変貌。
SSAP 始動
かつての「天才の孤独な戦い」を、誰もが挑戦できる「仕組み」へ民主化。
VISION-S プロトタイプ発表
CES 2020でEVプロトタイプを世界初公開。モビリティ領域への本格参入を宣言。
ソニー・ホンダモビリティ設立
ホンダとの合弁でAFEELAブランドを立ち上げ。エンタテインメントとモビリティの融合へ。
制度・プログラム
【歴史】「自由闊達にして愉快」:設立趣意書が説くイノベーションの本質
ソニーのすべての新しい試みは、1946年に 井深大 氏が執筆した「設立趣意書」に帰結する。そこには、現代のスタートアップや新規事業担当者が目指すべき理想が、戦後直後の混沌の中で、すでに完璧に定義されていた。
「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」
――井深大『ソニーの設立趣意書』(1946年)
この「自由闊達」と「愉快」という言葉こそ、ソニーが「計算」以上に「情熱」と「ワクワク(KANDO)」を重視する文化の源泉である。
1. 創成期:既存の枠を超えろ「トランジスタラジオ」
当時、巨大だった真空管ラジオに代わり、未知の技術だったトランジスタを「携帯できるラジオ」へと応用した。これは「技術のための技術」ではなく、「人々の生活シーンを変える」というソニー流の事業創造の原点であった。
2. 成長期:文化を創った「ウォークマン」
録音機能のない再生専用機という「非常識」なコンセプトを、盛田昭夫氏が強硬に推進。音楽を外に持ち出すという新しい「文化」を創出した。
3. 変革期:孤高の戦い「PlayStation」
家電の論理に染まったソニー本体の反対を押し切り、久多良木健氏が出島でつかみ取った勝利。これがソニーをエレクトロニクス企業から、ソフトウェア・ネットワーク企業へと変貌させた最大の転換点となった。
「PlayStationは、社内で孤立した一人の技術者の執念から生まれた。組織に守られたのではなく、組織と戦いながら勝ち取った。だからこそ、誰にも真似のできないDNAが刻まれている」
4. 現代:SSAPによる「イノベーションの民主化」
かつての天才的な「個」の力に頼るだけでなく、誰もが新規事業に挑戦できる仕組みを構築。wena wrist(スマートウォッチ)やREON POCKET(着るクーラー)など、大企業が捨てがちな「尖ったアイデア」を丁寧に拾い上げ、First Flightというクラウドファンディングを通じて市場に問うプロセスを確立した。
【戦略】SSAP(Sony Startup Acceleration Program)の衝撃
ソニーが2014年に開始した SSAP は、世界の日本企業がベンチマークする最高峰のインキュベーション・プログラムである。
- 一気通貫の伴走: アイデア募集だけでなく、設計、試作、製造、販売まですべての段階で、ソニー社内の「プロフェッショナル集団」が起案者をサポートする。
- First Flightの活用: クラウドファンディングによって、社内審査(ロジック)ではなく、顧客の熱狂(感情)を事業化の最終判断基準とする。
- 外販化への進化: 2018年からSSAPのノウハウを外部企業にも提供開始。2024年にはソニーネットワークコミュニケーションズと統合した法人向けソリューションサービスへと進化し、「イノベーションのプラットフォーム」としての地位を確立している。
小田島伸至が率いるSSAPチームは、起案者の「やりたい」という情熱を、ソニーの技術力と市場アクセスで加速させる「触媒」として機能している。
【事例深掘り】感動を生んだ新規事業の系譜
VISION-S / AFEELA:モビリティへの挑戦
2020年のCES で発表されたEVプロトタイプ「VISION-S」は、ソニーがエレクトロニクスの枠を超えた瞬間だった。2022年にはホンダとの合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」を設立し、 AFEELA ブランドを立ち上げた。
2025年にカリフォルニアで先行予約を開始し、2026年に納車開始。2027年初頭には日本での展開も予定されている。CES 2026では第2弾モデル「AFEELA Prototype 2026」を世界初公開し、2028年以降の発売を見据える。ソニーの強みであるセンシング技術、エンタテインメント体験、AIを融合させた「動くリビング」という新しいコンセプトを提示している。
Star Sphere:宇宙体験の民主化
SSAPから生まれたプロジェクト「Star Sphere」は、ソニー製カメラを搭載した人工衛星「EYE」を軌道上に打ち上げ、一般ユーザーが宇宙からの撮影を体験できるサービスとして2023年に始動した。JAXAや東京大学との共創により実現したこのプロジェクトは、衛星EYEが2025年2月に大気圏に再突入するまでの間、「宇宙の感動体験」を提供し続けた。
「ソニーが宇宙に行くのは、宇宙開発のためではない。宇宙という究極の『感動体験』を、すべての人に届けるためだ」
【キーパーソン】感動を追い求めた挑戦者たち
- 久多良木健:PlayStationの生みの親。社内の反対を押し切り、ゲーム事業を巨大なエンタテインメント帝国へと育てた。「既存事業の延長線上に未来はない」という信念で出島戦略を体現した人物。
- 小田島伸至:SSAP責任者として、「天才頼み」のイノベーションを「仕組み」に変える改革を主導。外販化を推進し、ソニーのイノベーション手法を社会インフラ化させた。
【成功と失敗】ソニーが学んだ教訓
ソニーの事業創造史は輝かしい成功の裏に、重要な失敗からの学びがある。
成功の構造: PlayStationの「出島戦略」は、本体の評価軸から切り離すことで「非常識」を育てる手法を確立した。SSAPはこの教訓を制度化し、個人の天才に頼らず「仕組み」で再現可能にした点が最大の進化である。
失敗からの学び: 2000年代のウォークマンのデジタルシフト遅れは、「自社技術へのこだわり」が市場の変化を見誤らせたケースとして語られる。ATRAC形式への固執がiPodに覇権を明け渡す結果を招いた。この教訓は、SSAPにおける「First Flight(市場の声を最優先する)」という仕組みに生かされている。
展望:クリエイティビティとテクノロジーの融合
ソニーは今、メタバース、モビリティ(AFEELA)、そして宇宙事業の経験を次のフェーズへと昇華させようとしている。「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスの下、SSAPの外販化によりソニー以外の企業にもイノベーションの手法を提供し、エコシステム全体の底上げを図る。
設立趣意書に書かれた「自由闊達にして愉快なる理想工場」は、80年の時を経て、物理的な工場の枠を超え、モビリティ、宇宙、AIという新たなキャンバスの上で拡張を続けている。
関連項目
成功の鍵
SSAP(一気通貫の伴走)
アイデアから販売、外販まで。ソニーのプロ集団が起案者の背中を支え抜く。
KANDO(感性の重視)
ロジック(売れるか)以上に「それは面白いか」「誰かをワクワクさせるか」を追求。
First Flight(市場による審判)
社内審査だけでなく、クラウドファンディングでの「熱狂」を事業化の最終根拠とする。
出島戦略(文化の死守)
本体の評価軸から切り離し、独立した環境で独自のスピードと文化を育成する。
おすすめ書籍
関連項目
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