人物概要
西田 誠(にしだ まこと)は、MOONRAKERS TECHNOLOGIES株式会社の代表取締役CEOである。東レ株式会社出身の**連続社内起業家(シリアル・イントラプレナー)**として日本有数の実績を持ち、素材メーカーの技術力をD2Cアパレルという新領域で開花させた人物として知られる。
経済産業省が推進する「出向起業」制度を活用して東レからスピンアウトを果たし、大企業のアセットを活かしながらスタートアップとして独立するという新しい起業モデルのトップランナーである。日本新規事業大賞をはじめとする数々のアワードを受賞している。
経歴・実績
1993年、東レ株式会社に入社。素材メーカーの営業・事業開発のフィールドでキャリアを積みながら、これまでに3つの大型新規事業を立ち上げ、いずれも成功に導いてきた稀有な経歴を持つ。
最初の挑戦は、当時誰も注目していなかったフリース素材を活用した新事業の創出であった。素材の機能性に着目し、アパレルメーカーとの協業を通じてフリースの市場を大きく拡大させることに成功した。続く2つ目の事業では、BtoB(企業間取引)に特化してきた東レのサプライチェーンを最終製品の縫製工程にまで拡張するという画期的なビジネスモデルを構築。この一連の事業創出により、東レの繊維事業を約1兆円規模の収益基盤に押し上げる中核的な役割を担った。
2度の成功体験を経て、西田は「素材メーカーが直接消費者と向き合う」という3度目の挑戦に踏み出す。東レが保有する先端素材技術を、BtoC(消費者向け)の自社ブランドとして世に送り出すという、社内でも前例のない構想であった。素材の機能性を最大限に活かしたプロダクトを、中間流通を介さず消費者に直接届けるというビジネスモデルは、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈でも先進的な取り組みとして注目された。
現在の職務・プロジェクト
自身にとって3度目の新規事業として、東レの先端素材を活用した超高機能アパレルD2Cブランド「MOONRAKERS」プロジェクトを立ち上げた。「TECHNOLOGY FUTURE, ALTERNATIVE FASHION」をブランドコンセプトに掲げ、宇宙服にも使われる素材技術やナノテクノロジーを駆使した機能性ウェアを、EC(電子商取引)を中心としたD2Cモデルで直接消費者に届けるというコーポレートベンチャー型の事業モデルである。
2023年11月、経済産業省の「出向起業」制度を活用し、「MOONRAKERS TECHNOLOGIES株式会社」を設立、代表取締役CEOに就任。出向起業とは、大企業に在籍したまま(または出向の形で)自らが代表となるスタートアップを設立する仕組みであり、東レの素材技術・ブランド・サプライチェーンを活用しつつ、独立した経営判断のスピード感を両立させている。
MOONRAKERSの製品は、超軽量・高耐久・防水・保温といった先端素材ならではの機能性と、洗練されたデザインの両立が特長である。クラウドファンディングでも高い支持を獲得し、国内外のファッション業界やテクノロジー業界から大きな注目を集めている。
日本新規事業大賞をはじめ、複数のアワードを受賞しており、「大企業発D2Cブランド」という新ジャンルのパイオニアとしての地位を確立している。
思想とアプローチ
西田の事業哲学の核心は、「BtoB企業こそ、最終消費者に直接価値を届けるポテンシャルを持っている」という確信である。素材メーカーはサプライチェーンの上流に位置するがゆえに消費者との接点を持たないが、その技術力は世界最高水準にある。この「隠れた価値」を可視化し、ブランドとして世に出すことが、日本のものづくり企業の新たな成長戦略になると説く。
また、「新規事業は1回で終わらせてはいけない。何度も挑戦し、成功と失敗の両方から学び続けることで、組織と個人の新規事業創出力が磨かれる」という連続起業家ならではの哲学を持つ。30年にわたる東レでのキャリアの中で培われた組織の動かし方、経営層の巻き込み方、そして撤退判断の見極め方は、多くのイントラプレナーにとって貴重な指針となっている。
西田は「出向起業」という制度の意義についても積極的に発信しており、「大企業の技術力と信用力を活かしながら、起業家精神を持って意思決定できる環境こそが、日本発のイノベーションを加速させる鍵である」と語る。素材産業という日本が世界的競争力を持つ領域で、技術の出口戦略としてのD2Cブランド構築を実践する姿勢は、製造業全体にとっての新たなロールモデルとなっている。