リコー
Ricoh Company, Ltd.
精密機器・IT大手。「デジタルサービスの会社」への変革を掲げ、社内外統合型アクセラレーターTRIBUSと2つのCVCファンドでイノベーション創出基盤を構築。
企業概要
- 企業名
- リコー
- 業種
- 精密機器 / IT
- 所在地
- 東京都大田区
- 創業
- 1936年
- 公式サイト
- www.ricoh.co.jp
新規事業の歴史
History & Evolution
「OA」の概念を提唱
「オフィスオートメーション」で事務機器分野の先駆者となる
山下良則が社長に就任
「デジタルサービスの会社」への変革を宣言
TRIBUS(トライバス)を開始
社内外統合型アクセラレータープログラム。日本初の統合型モデル
StareReap・RICOH Image Pointerが事業展開
アートブランド事業とクラウドファンディングで3,000万円超を調達
RICOH Innovation Fund(1号)設立
SBIインベストメントとの共同CVCファンドを設立。国内外9社へ出資を実行。
1期生5チームが「卒業」
ネクスト・ステージへ移行。TRIBUS 2024で社外172件の過去最多応募
TRIBUS 2025で社外応募255件
第7期を実施し、プログラムの継続的拡大を実証。
RICOH Innovation Fund Ⅱ設立・TRIBUS 3期生卒業
2026年4月、SBIインベストメントとの共同でCVC2号ファンドを設立。海外スタートアップへの投資を強化。2月にはTRIBUS Investors Dayを開催し、アルムナイコミュニティが始動。
制度・プログラム
リコーの新規事業の歴史
リコー は1936年に理化学研究所の感光紙製造・販売技術を母体として創業した。 1977年に「オフィスオートメーション(OA)」の概念を提唱 し、「機械ができることは機械に、人間はもっと創造的な仕事を」という思想で事務機器分野の先駆者となった。
その後、複合機・プリンター事業を主力に成長を遂げたが、2010年代にはペーパーレス化の進展で市場環境が大きく変化する。 2017年に山下良則が社長に就任 し、「OAメーカーから デジタルサービスの会社 への変革」を宣言した。この構造転換の中で、新しい提供価値と事業の創造が組織的な最重要課題となる。
「リコーが仕掛けた新規事業創造の実験——社内起業と外部スタートアップの共創プログラム」
――リコーが仕掛けた新規事業創造の実験(01Booster)
2019年 、リコーは社内外統合型アクセラレータープログラム 「TRIBUS(トライバス)」 を立ち上げた。TRIBUSの最大の特徴は、社内起業家とスタートアップ企業の双方から提案を募り、相互交流のもとで事業化を目指す 「統合型」のアプローチ にある。日本初のモデルとして注目を集めた。
TRIBUSの「TRI(3)」はリコー創業者の「三愛精神」の「三」と、スタートアップ・社内起業家・リコーグループの3つのステークホルダーが一体となることを意味する。2024年度の第6期では 社内65件、社外から過去最多の172件 が応募。2025年度の第7期では社外応募が 255件 に達し、プログラムの知名度と信頼が年々向上している。
「社内外の審査者により選出された社内起業家チームとスタートアップ企業は、プログラム期間中、リコーグループ内外の専門家による支援を受けながら、ビジネスアイデアの検討や実証実験などに取り組む」
――統合型アクセラレータープログラム「TRIBUS 2025」本年度参画チームを選出(リコー プレスリリース, 2025年9月)
新規事業戦略の特徴
リコーの新規事業戦略を際立たせているのは、 「あり方」を起点とした制度設計 である。森久泰二郎は「手法やフレームワークの導入よりも、自社はどういう新規事業組織でありたいのかという問いを組織で共有し、考え続けることを重視する」と語る。起案者やステークホルダーへのヒアリングを繰り返し、制度そのものにデザイン思考を適用する先進的なアプローチである。
統合型プログラムの設計においては、社内起業家がスタートアップのスピード感に刺激を受け、スタートアップが大企業のリソースやネットワークを活用できる 相互補完の関係 を意図的に構築している。統合ピッチコンテストでは社内外のチームが同じ舞台でプレゼンテーションを行い、競争と協力が同時に生まれる。
「大企業社員とスタートアップが学び合う共同体」
――リコーの「ビジコン」出資先選びではない真の狙い(東洋経済オンライン, 2024年1月)
もう一つの戦略的特徴は、 「巻き込みの仕組み」の設計 である。TRIBUSを支える「サポーターズ制度」には 400名以上のリコーグループ社員 が登録し、参加チームの要望に応じた支援を行う。さらに 約1,700人のリコーグループ社員 がTRIBUSコミュニティを形成しており、プログラムの形骸化を防ぐ基盤となっている。
「他の人を手伝うということが好きな傾向がある」というリコーの企業文化が、コミュニティやサポーター制度と共鳴し、多くの社員の参加を促進している。
――1700人のイノベーションコミュニティはいかにして作られたか(01Booster)
代表的な事業事例の深掘り
1期生の「卒業」とネクスト・ステージ
TRIBUSの持続的な進化を象徴するのが、2019年に採択された 1期生5チームの「卒業」 とネクスト・ステージへの移行である。2024年2月に正式発表された。
「TRIBUSで得たかけがえのない経験・知見を活かし、それぞれのネクストステージへ」
――TRIBUS社内起業家1期生のネクスト・ステージへのチャレンジが決定(リコー プレスリリース, 2024年2月)
前鼻毅が率いるRxRチームの 「RICOH Virtual Workplace」 は、VR上で任意の空間を再現するソリューションで、建設業界での活用が見込まれたことから リコーデジタルサービスBUに移管 された。2.5D印刷技術でアート業界に挑んだStareReapチームは、 400作品・1,930点のアート作品を販売 し、「令和4年度文化庁長官表彰」を受賞している。
リコー初のクラウドファンディングで 3,000万円超を調達 した「RICOH Image Pointer」、発展途上国向けピコ水力発電の「WEeeT-CAM」、インド女性のエンパワーメントを支援するエシカルアパレル「RANGORIE」と、精密機器メーカーの枠を大きく超える多彩な事業が生まれた。
TRIBUS 2025(第7期):過去最多の応募と3期生卒業
第7期「TRIBUS 2025」では社外応募が過去最多の 255件 に達し、社内からも65件の応募が集まった。2025年9月の統合ピッチを経て、社内起業家 4チーム とスタートアップ企業 8社 が採択された。
2026年2月の成果発表会「TRIBUS Investors Day」では、各チームが新サービスの発表やプロトタイプを用いた実証実験の成果を発表した。同時に、2021年度に採択された 3期生2チームの卒業式 も実施された。卒業生が参加する「TRIBUSアルムナイコミュニティ」も始動し、現役チームへの知見提供が組織的に行われる体制が整いつつある。
キーパーソンと組織文化
森久泰二郎は、TRIBUSの制度設計と進化を担うキーパーソンである。「あり方」を問い続けるという姿勢は、単にプログラムを運営するのではなく、 組織そのものの変容 を目指していることを示している。
リコーの組織文化には 「他の人を手伝うことが好き」 という特性がある。サポーターズ制度やコミュニティがこれほどの規模に成長した背景には、この企業文化との共鳴がある。TRIBUSは制度を通じて、この文化的資産を意図的に活性化させている。
山下良則(当時社長、現会長)は、TRIBUS 1期生の卒業式に出席し、社内起業家と直接対話する場を設けた。経営トップが新規事業プログラムに継続的にコミットする姿勢は、プログラムの正統性を組織内に示す重要なシグナルとなっている。
リコーは「三愛精神(人を愛し、国を愛し、勤めを愛す)」を創業の理念として掲げてきた。TRIBUSの「TRI(3)」にこの精神を込めたことは、新規事業創出を経営理念と接続させる意図の表れである。
成功と失敗から学べること
リコーの事例から最も学ぶべきは、社内起業とオープンイノベーションを別々に運営するのではなく、 「統合型」として設計する価値 である。社内起業家はスタートアップのスピード感と市場志向に刺激を受け、スタートアップは大企業のリソースやネットワークを活用できる。この相互補完が、単独のプログラムでは得られない化学反応を生み出している。
もう一つの重要な教訓は、プログラムの 「卒業」設計 の重要性である。多くの企業の新規事業提案制度はアイデア採択までは設計されていても、その先の「出口」が曖昧なケースが多い。TRIBUSでは1期生のBU移管・事業売却・独立等の多様なネクスト・ステージを明確に設計し、「卒業」を通過点として定義した。さらに3期生の卒業とアルムナイコミュニティの始動により、 「卒業生が後輩を育てる」知の循環 が制度として組み込まれた。
自社でプログラムを検討する際は、「11の事業領域」のようなテーマ設定を行い社内外両方から広く提案を募ることが有効だ。加えて、 サポーターズ制度のような「巻き込みの仕組み」 を最初から設計に組み込むことで、プログラムの形骸化を防ぐことができる。
CVC戦略:RICOH Innovation Fund
1号ファンドの設立と実績(2023年11月)
リコーは 2023年11月 、SBIインベストメントとの共同で初のCVCファンド「RICOH Innovation Fund」を設立した。デジタルサービスの会社への変革を加速するため、市場や技術の変化が速い分野での 外部企業との連携・協業 を通じた事業開発を目的とする。
1号ファンドでは国内外 9社 への出資を実行し、スタートアップの成長支援と協業による新たな顧客価値の提供を開始した。代表的な連携事例として、アスエネとの協業による脱炭素経営支援(東京都の中小企業300社が対象)や、Butlr Technologies(米国)とのプライバシー配慮型AIワークプレイスセンサーの国内展開がある。
「スタートアップ投資を通じた新規事業の創出を目指し、お客様のはたらく場である『ワークプレイス』の価値向上につながる海外スタートアップへの戦略投資を強化する」
――リコー、新CVCファンド「RICOH Innovation Fund Ⅱ」を設立(リコー プレスリリース, 2026年4月)
RICOH Innovation Fund Ⅱ(2026年4月設立)
2026年4月7日、リコーはSBIインベストメントとの共同で 「RICOH Innovation Fund Ⅱ」 を設立した。2026年度から2030年度を対象とする 「中期経営戦略’26」 に基づき、1号ファンドで確立した投資・連携プロセスを継承しつつ、海外スタートアップへの投資と海外拠点との連携 を一層強化することが主眼である。
投資方針の核心は「ワークプレイスのインテグレーター」という中期経営戦略のビジョンとの整合にある。デジタル・AI・ディープテック領域を含む成長分野において、リコーの製品・サービス・グローバル拠点と組み合わせることで事業シナジーを生み出す。SBIインベストメントとの協業体制により、VCとしての目利き力と広範な投資ネットワークを活用している。
今後の展望
リコーは 2036年の創業100周年 に向けて、「OAメーカーからデジタルサービスの会社へ」という変革の只中にある。TRIBUSはこの変革を支える社内新規事業創出の基盤として、RICOH Innovation Fund Ⅱは外部スタートアップとの共創基盤として、それぞれ機能する 二本柱の戦略 が整いつつある。
2026年2月に始動した「TRIBUSアルムナイコミュニティ」は、卒業チームの経験とノウハウを現役チームに還元する仕組みとして注目される。プログラムの「入口」から「出口」、そして 「出口から入口への再循環」 まで、一気通貫のエコシステムが形成されつつある。
社外応募が第6期の172件から第7期の 255件 へと急増している事実は、TRIBUSの外部認知度と信頼性が着実に向上していることを示す。RICOH Innovation Fund Ⅱによるグローバル投資の拡大と、TRIBUS発の事業群がどこまで 新たな事業ドメイン を広げられるかが、リコーの次の10年を左右する鍵となるだろう。
関連項目
参考文献
- リコー公式サイト
- リコー、新CVCファンド「RICOH Innovation Fund Ⅱ」を設立(2026年4月)
- SBIホールディングス プレスリリース:CVC2号ファンド共同設立
- 中期経営戦略「中期経営戦略’26」(2026年度〜2030年度)を策定
成功の鍵
社内外統合型アクセラレーター(TRIBUS)
社内起業家とスタートアップを同じプログラムで募集し、相互刺激と大企業リソースの共有で共創を促進
CVC戦略(RICOH Innovation Fund)
SBIインベストメントとの共同CVCで、ワークプレイス価値向上につながる国内外スタートアップへ戦略投資。中期経営戦略'26に基づき海外投資を強化。
サポーターズ制度とコミュニティ
400名超のサポーターと約1,700名のコミュニティが参加チームを支援し、プログラムの形骸化を防止
「あり方」起点の制度デザイン
手法やフレームワークの導入よりも「自社はどういう新規事業組織でありたいか」を問い続ける
卒業と出口戦略の明確化
BU移管・事業売却・スピンアウトなど複数の出口を用意し、事業の成長段階に応じた最適解を選択
関連項目
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