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用語集

シリーズ・ラウンド命名体系(Series A/B/C資金調達)

スタートアップの資金調達は、Pre-Seed → Seed → Series A → B → C以降というアルファベット順の命名体系で段階化される。「Series」という名称は米国VCの優先株式発行実務に由来し、各ラウンドで発行される優先株式の系列名(Series A Preferred Stock等)がラウンド呼称として定着した慣行である。本稿では命名の背景、各段階の定義、投資家の評価軸の変化を整理する。


命名の起源:優先株式の系列から

「Series A/B/C」という呼称の起源は、米国のVC投資実務における優先株式(Preferred Stock)の発行系列にある。機関投資家が初めて参画するラウンドで発行される優先株式が「Series A Preferred」と呼ばれ、以降のラウンドでは「Series B Preferred」「Series C Preferred」と連番される。このアルファベット順の系列名がラウンド全体の通称として定着した。

Seed以前の段階(Pre-Seed・Seed)では機関投資家ではなくエンジェル投資家やインキュベーターが中心となるため、優先株式の系列名が使われないことが多く、「Series○」という命名が適用されないのが一般的である。日本のスタートアップエコシステムでは2010年代後半からこの命名体系が実務的に定着した。


各ラウンドの段階別整理

Pre-Seed・Seed:仮説検証と初期チーム組成

Pre-Seed は創業者の原体験・課題仮説・市場規模仮説を検証する最初期段階である。主な投資家はエンジェル投資家・家族・友人・アクセラレーターであり、国内評価額の目安は数千万円〜2億円程度、調達額は数百万円〜3,000万円程度となる。プロダクトが存在しないかプロトタイプ段階のため、「人と機会」への投資という性格が強い。

Seed ではMVP(Minimum Viable Product)の開発と初期顧客獲得を目的とする。シードVCやエンジェル投資家が主体となり、国内では調達額数千万円〜2億円程度が多い。初期顧客のフィードバックを集め、次のPMF(Product-Market Fit)検証に向けた事業仮説を精緻化するフェーズである。

Series A:PMF検証とスケールの兆し

Series A は機関投資家(独立系VC・CVC)が本格参画する最初のラウンドである。投資家はPMFの兆候、すなわちMRR(月次経常収益)の推移・解約率・初期顧客のリテンション指標を評価する。国内の目安は評価額10億円〜50億円、調達額数億円〜十数億円。「成長エンジンが回る兆しを数字で示せるか」が分岐点となる。

Series B:ユニットエコノミクスとスケール実証

Series B では再現性とユニットエコノミクスが問われる。1顧客あたりの獲得コスト(CAC)と顧客生涯価値(LTV)の比率、営業組織のスケーラビリティ、新規地域・セグメントへの展開可能性が評価軸となる。国内の目安は評価額50億円〜200億円、調達額十数億円〜数十億円。組織拡大のための採用・マーケティング投資が主要用途となる。

Series C以降:市場リーダーポジションの確立

Series C以降 では、市場における支配的なポジション確立が問われる。グロース投資家・PE・海外VCが参画し、海外展開・新規事業・大型M&Aが調達目的に加わる。評価額は200億円〜数千億円と幅広く、事業の成熟度によって大きく異なる。上場準備フェーズ(Pre-IPO) では機関投資家・政府系ファンドが参画し、IPO後の株主構成を意識したラウンド設計となる。


評価軸の段階的変化

ラウンド主要評価軸キーワード
Pre-Seed創業者・市場魅力・課題仮説人と機会
Seed初期顧客・MVP検証結果仮説の有効性
Series AMRR・解約率・PMF指標成長エンジン
Series BCAC/LTV・組織スケール再現性
Series C以降市場シェア・競合優位・IPO準備支配的地位

評価額のレンジは年度・市況・業種によって大きく振れる。生成AIや半導体など評価が高騰する分野では、Series Aで100億円超のバリュエーションが付くケースもあり、ラウンド名と評価額の対応関係は固定的ではない点に注意が必要である。


カーブアウト・大企業発ベンチャーにおける特殊性

カーブアウトによって独立した新会社の資金調達では、親会社からの初期出資が「SeedまたはSeries A相当」として扱われることが多い。形式上100%子会社であっても、外部投資家が後から参画する際に「親会社出資分をSeedとみなす」か「Series Aから新規にカウントする」かは個別交渉となる。

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の投資はSeries A〜Bの段階で戦略的出資として参画するパターンが多い。CVCは純粋なVC投資リターンに加えて事業シナジーを評価基準に加えるため、バリュエーション判断が独立系VCとは異なる論理で動くことがある。


関連項目


参考文献・出典

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