概要
docomo STARTUP は、NTTドコモグループ3社(NTTドコモ・NTTコミュニケーションズ・NTTコムウェア)が2023年7月に開始した社内起業・新規事業創出プログラムだ。「社員のアイデアから、NTTドコモグループ発のスタートアップを輩出する」というコンセプトを掲げ、大企業の正社員が外部投資を受けてスピンアウトするまでのプロセスを一貫して支援する。
2026年5月時点で累計10社のスタートアップをスピンアウトしており、大企業の社内起業プログラムとして国内有数の実績を持つ。
3フェーズの構造
プログラムは独立した3つのフェーズで構成されている。
COLLEGE(学ぶ場) では、第一線で活躍する起業家を社内外から招き、新規事業創出のマインドとスキルを学ぶ。アントレプレナーシップ育成に特化した人材開発プログラムとして機能する。
CHALLENGE(挑む場) では、社内公募で集まったチームがアイデアを事業化する過程を歩む。ユーザーヒアリング・プロトタイプ開発・ピッチを繰り返しながら、多様なメンター陣のサポートを受けて事業の蓋然性を検証する。
GROWTH(育てる場) では、CHALLENGEを通過した事業を検証予算とメンタリングで支援しながら外部資本調達を目指す。社外パートナーとの共創スキームもこのフェーズで具体化する。
2経路のスピンアウト設計
GROWTH フェーズを経た事業には2つの独立経路が用意されている。
STARTUPコース は早期に外部資金を調達して独立会社を設立する経路だ。起案者がオーナーシップを持ちながら、事業をリードする仕組みになっている。外部資本調達成功時には報奨金300万円が授与され、仮に事業撤退となった場合でもドコモグループへの復職が可能とされており、挑戦に伴うリスクを制度的に軽減している。
AFFILIATEコース はドコモ内でしっかりと成長した後に子会社として分離独立する経路で、外部資本に頼らず親会社の支援下で成長を続けたいケースに対応する。
実績と注目事例
2026年5月時点の10社目となる Aeromuse(株式会社エアロミューズ) は、エアライン向けパイロット採用プラットフォーム「HUD SONiC」を開発したスタートアップだ。2032年には世界で約8万人のパイロット不足が予測される中、パイロットの飛行記録(ログブック)のデジタル化と採用マッチングを組み合わせたサービスで業界課題に取り組む。NTTドコモと千葉道場が出資し、2026年5月1日に事業を開始した。
他の注目事例として、次世代キャリア探索支援の「はたらく部」(2024年4月スピンアウト)やAIを活用したIP監修効率化の「AIPEX」などがある。
大企業社内起業プログラムとの比較
docomo STARTUP が国内の同種プログラムと異なる点は、累計10社という輩出実績の蓄積と、復職保証と高額報奨金を組み合わせたリスク軽減設計にある。多くの大企業が社内起業制度を設けているが、実際にスピンアウトまで到達する事業は限られる中で、毎年複数社を輩出し続けている継続的な運営実績は注目に値する。