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事業事例

avatarin ― ANA発・世界初のアバターロボットスタートアップが挑む「瞬間移動」

ロボティクス・モビリティテック #モビリティ #ロボティクス #スピンアウト #社内起業
事業・会社概要
事業会社
avatarin
業界
ロボティクス・モビリティテック
設立/開始
2020年
開始年
2020年
代表者
深堀 昂
資本金
77億円(累計調達額)
本社
東京都中央区日本橋
サービスサイト
avatarin.com
コーポレートサイト
avatarin.com

History & Evolution

2016

XPRIZE財団のコンペでグランプリを獲得

ANA社員の深堀昂が「ANA AVATAR XPRIZE」のデザインで社外での圧倒的評価を得る

2018

ANA内で「アバタープロジェクト」が始動

コンペの成果を梃子に、社内で「移動の民主化」を目指すプロジェクトを本格化

2020

avatarin株式会社を設立しスピンアウト

ANAホールディングス初となるスタートアップとして独立法人化

2024

累計77億円の資金調達とグローバル展開

ソフトバンク等からの大型シリーズBラウンドを実施し、新たな社会インフラ構築を加速

航空会社が描く「移動の民主化」

avatarin(アバターイン)」は、全日本空輸(ANA)ホールディングス発の新規事業プロジェクトがスピンアウト(独立)して2020年に設立されたスタートアップ企業である。日本の大企業から誕生した社内ベンチャーの中で、事業の壮大さと資金調達額の規模において群を抜く成功事例の一つだ。

起案者であり代表の深堀昂は、元々ANAで運航技術等に関わる若手社員であった。彼は衝撃的な統計データに着目する。「世界の人口のうち、飛行機に乗って移動したことがある人は、実はたったの6%しかいない。残りの94%は、身体的な制約、経済的な制約、あるいはビザの問題などで、長距離の移動を享受できていない」

飛行機を持つANAだからこそ、飛行機に乗れない94%の人々にも移動の自由を届ける義務がある。この強烈な使命感から、「肉体」を運ぶのではなく、アバターロボットを通じて「視覚・聴覚・存在感」だけを遠隔地に瞬間移動させる**「移動の民主化」**の着想を得た。

コンペティションのグランプリを「梃子(てこ)」にする

しかし、数千億円規模の航空インフラを回す大企業の中で「ロボットで瞬間移動する」というSFじみた新規事業をボトムアップで通すのは至難の業であった。既存の航空ビジネス(肉体の移動)とカニバリ(競合)を起こす自己破壊的なアイデアでもあったからだ。

そこで深堀が採った突破法こそが「社外の圧倒的な権威付け」である。 彼は2016年、米国の非営利財団XPRIZEが主催する世界的なイノベーションコンペティションに「ANA AVATAR」というコンセプトを提案。なんとそこで**グランプリ(世界一)**を獲得してしまった。この「社外からの絶大な評価」がいわゆる黒船となり、ANA社内での抵抗感を大きく下げてプロジェクトの本格始動(予算獲得)へと直結したのである。イントラプレナーにおける「賞の逆輸入」の究極の成功例である。

アバターロボット「newme」と数十億円の外部調達

2020年4月、深堀はANAを退職し、ANAHD初のスタートアップとして「avatarin株式会社」を設立して完全にスピンアウトした。

同社はコミュニケーション・アバターロボット「newme(ニューミー)」を独自開発。単なるテレビ会議システムとは異なり、利用者が遠隔地にあるnewmeにパソコン等からアクセスすると、あたかも自分がそこに立ち、見て、聞いて、歩き回っているかのような「物理的なプレゼンス(存在感)」を得られる。

これは、観光地へのバーチャル旅行にとどまらず、遠隔地からの高度な専門技能の提供(医療やインフラ点検)など、世界中の労働力不足を抜本的に解決する**「汎用的なAIロボティクス・プラットフォーム」**としての巨大なポテンシャルを持つ。

このビジネスモデルには莫大な研究開発費が必要となる。ANAの100%子会社という枠組みを飛び出し、独立した株式会社としてソフトバンク等から累計77億円(シリーズB)の第三者割当増資を実施したことで、世界と戦える真のモビリティテック・スタートアップへと躍り出たのである。

この事例から学べること

avatarinの事例は、既存ビジネスの枠を遥かに超える破壊的イノベーションを、大企業の組織力を使って生み出す「超アクロバットな事業創造」の教科書である。

第一に、強烈なパーパス(大義名分)のもとでのカニバリゼーションの受容である。 「飛行機に乗る人を運ぶ」ANAが「飛行機に乗らなくて済むロボット」を作る。これは一見矛盾するが、「移動の民主化」という上位概念(パーパス)の中で両者は統合される。自社のコアビジネスを破壊しうる技術を外部に握られる前に、自らの手で生み出す(自己破壊)という経営の胆力が試されている。

第二に、「圧倒的な実績」という武器による社内政治の無力化である。 大企業内で非常識なアイデアを通すには、ロジックよりも「外圧(権威)」が効く場合がある。世界的なコンペでのグランプリ獲得という揺るぎない外部評価を「武器」として仕入れ、社内の反対意見を無力化して事業化パスをこじ開けた深堀のアントレプレナーシップは、極めてハッカー的で優秀な立ち回りである。

第三に、巨大なビジョンに見合う「スピンアウトと外部資本」設計である。 航空インフラと同等の「新たな社会インフラ」を創る事業には、一企業内のR&D予算では到底足りない。ANAからの後押し(信用)を受けつつも、資金調達の自由度が高いスピンアウト法人を選択し、ベンチャーキャピタルから数十億単位の巨額なリスクマネーを集めた。事業の射程距離から逆算した、完璧な資本政策設計である。

関連項目

成功の鍵

1

社外の権威(グランプリ)を利用した社内突破法

壮大すぎるビジョンを社内で通すため、世界的なイノベーション推進財団のコンペに事業案をぶつけ、そこで1位を獲得して社内を説得する「逆輸入」アプローチ

2

既存事業への「自己破壊的」なイノベーション

「人を乗せて空を飛ぶ」航空会社のど真ん中で、「肉体を運ばずにロボットで瞬間移動する」というカニバリ(共食い)にも見える未来のインフラをあえて自社から生み出した

3

スピンアウトによる巨額の資本調達

ハードウェアとAIプラットフォームの開発という莫大なR&D資金を要する事業モデルに対し、ANAからの完全独立(スピンアウト)を選択し、数十億円単位のリスクマネーを外部から獲得

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