課題・背景:「朝7時から終電まで」の現場を変えたい
建設現場の監督は、設計図面から必要な資材を拾い出し、複数の業者に見積もりを依頼し、発注・搬入の指示を出し、職人に伝達するという一連の手配業務に膨大な時間を費やしている。朝7時前後から終電前後まで 働くことが珍しくない業界の実態は、こうした定型業務の積み重ねに起因する。
セコナレは、この 資材手配業務を一気通貫で効率化するプラットフォーム だ。図面からの資材拾い出し、見積もり比較、発注・搬入指示、職人への伝達までを一元管理し、現場監督の業務負荷を根本から削減する。
創業者の小宮祐輔は、2014年に清水建設に新卒入社し、6年間にわたり建築現場で監督業務に従事 した。その後、社内のビッグデータ活用プロジェクトに3年間参画した。現場の痛みとデータ活用の知見を掛け合わせた事業構想である。
取り組みの経緯:清水建設CV制度からのカーブアウト
セコナレは、清水建設のコーポレートベンチャリング(CV)制度を通じて事業化された。CV制度は 「社員が独立して新会社を設立・経営する」ことを前提 とした制度であり、社内の新規事業部門として育てる一般的な社内起業制度とは一線を画す。
小宮は2025年1月に本格的な事業開発を開始した。出向形態での活動のため、清水建設の社員証が残り、建設現場への立ち入りや社内の人脈を活用できる環境が維持された。
「本当にゼロから裸一貫の状態。ただ、僕自身がもともと現場だったので、現場でのつながりがある」
――小宮祐輔(01Booster)
3月にはVCからほぼ確約を取得し、5月末に法人を設立。7月に資金調達を完了 した。わずか半年での独立と資金調達は、CV制度の設計と01Boosterの伴走支援の合わせ技だった。
展開・進化:社内審査とVCの目線のギャップ
セコナレの事業計画は、社内審査とVCの審査で求められるものが大きく異なっていた。清水建設の社内では「現場監督の業務効率化」という限定的な市場で評価されていたが、外部VCは数百億円規模の市場 にスケールできる事業計画を要求した。
「社内審査用に考えていた計画だと、VCからは全然お金もらえない」
――小宮祐輔(01Booster)
清水建設CV制度が外部VCからの資金調達をステージゲートの通過条件に組み込んでいるのは、この「目線のギャップ」を意図的に利用した設計だ。親会社の出資だけで完結させず、第三者の市場性評価によって事業の射程を強制的に広げる 構造になっている。
この事例から学べること
セコナレの事例は、大企業のカーブアウトにおける3つの実践知を示している。
第一に、「自分の痛み」から始まる事業は強い。 小宮は6年間の現場監督経験を通じて、資材手配の非効率を身をもって知っていた。顧客インタビューから始めるのではなく、自身が最初のユーザーであるという原体験が、プロダクトの解像度を高める。
第二に、「出向スキーム」が親企業との適切な距離感を生む。 完全に独立すると親企業のアセットにアクセスできなくなり、社内に留まるとスピードが落ちる。出向という中間形態が、建設現場へのアクセスと起業家としての自由度を両立させた。
第三に、外部資金調達の義務化が事業の「器」を大きくする。 社内の承認だけで進む事業は、社内市場の延長線上に留まりやすい。VCの要求に応えるプロセスが、ニッチなツールをスケーラブルなプラットフォームへと進化させた。
関連項目
参考文献・出典
- 清水建設発カーブアウトの舞台裏——「社内起業」から「独立」まで、制度設計が生んだ新しい起業モデル(01Booster、2025年10月28日)
- 清水建設発の新規事業がカーブアウト起業(PR TIMES、2025年9月11日)