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事業会社

ハウス食品グループ本社

ハウス食品グループ本社 ロゴ

House Foods Group Inc.

大手食品メーカー。「リアルな結果やデータ」で語る実証型の新規事業開発で食の未来を創造。

企業概要
企業名
ハウス食品グループ本社
業種
食品
所在地
大阪府東大阪市
創業
1913年
公式サイト
housefoods-group.com

新規事業の歴史

History & Evolution

1913

創業(薬種化学原料店として大阪で開業)

カレー粉の製造に着手し、後にカレールウの国民的ブランドへと成長する礎を築く

2018

SBIインベストメントとCVCファンド1号を設立

フードテック領域のスタートアップ投資を開始。外部イノベーションの取り込みに着手

2020

社内公募制度「GRIT」を開始

4年目以降の社員全員にアイデアを形にするチャンスを提供。「度胸」を意味する制度名で挑戦を促す

2022

新規事業実証会社「パッチワークキルト」を設立

本体の意思決定プロセスに縛られない「出島」として、GRIT発案者の藤井弾が代表取締役に就任

2023

「Kidslation」「タスミィ」の2事業を開始

GRIT第1期から生まれた冷凍幼児食EC・保育園向け惣菜自販機がそれぞれ事業化

2023

CVCファンド2号(50億円規模)を設立

SBIインベストメントとの共同で2号ファンドを設立し、食と健康の交差点にある革新的企業への出資を拡大

2025

Kidslationリニューアル・タスミィ全国100園を目指す

ECサイトを全面刷新し商品をリニューアル。タスミィは無人販売対応の専用什器を導入し導入園を拡大

ハウス食品グループの新規事業の歴史 — 時系列で全体像を把握

ハウス食品グループ は1913年に大阪で創業し、カレーやスパイスを中核とした確固たるブランド力を持つ食品メーカーである。バーモントカレー、ジャワカレー、フルーチェなど、 国民的ブランドを複数保有 し、カレールウ市場では圧倒的なシェアを誇る。

しかし 国内人口の減少や消費者の嗜好変化 が加速する中、既存ブランドの延長だけで持続的成長を実現することは難しい。食品ビジネスは原材料調達から製造、流通、販売まで長いバリューチェーンを持ち、新商品の市場投入には多大な時間とコストを要する。「既存の量販モデルで成功してきた」という実績が、かえって新しいビジネスモデルへの挑戦を阻むジレンマに直面していた。

2018年 にSBIインベストメントとの共同でCVCファンドを設立し、外部からのイノベーション取り込みに着手。続く 2020年 にはグループ全体から新規事業アイデアを募る社内公募制度 「GRIT」 を開始した。そして 2022年10月 には実証を担う出島として パッチワークキルト株式会社 を設立し、本格的な新規事業創出のエコシステムを構築している。

新規事業戦略の特徴

ハウス食品グループの新規事業戦略は、「行動主義」と「出島子会社」と「CVC」の3つを組み合わせた多面的なアプローチが特徴である。

第一に、 「実証で語る」という行動主義 を徹底している。社内の保守的な組織文化の中で新規事業を前に進めるために、まず小さな実験を設計し、実際の顧客から得た反応をデータとして社内に持ち帰る。仮説検証のサイクルを高速で回し、 意見ではなく事実に基づいた議論 を可能にするアプローチが、経営層の信頼を勝ち取る最も確実な方法である。

「事業の成功要因や課題はすべて現場にある。お客様のところに行ってインタビューをしてみよう、現場に出向いて行動観察をしてみよう、という行動主義が率先されている」

――ハウス食品グループの新規事業提案制度「GRIT」、立ち上げから4年の今を聞く(GOB株式会社, 2024年)

第二に、 パッチワークキルト株式会社 を「出島」として設立した点が特筆される。GRITの発案者でもある藤井弾が代表取締役社長に就任し、本体の意思決定プロセスに縛られず、代表の判断でスピーディに実証を開始できる体制を整えた。

「新たな価値を持つ商品やサービスを販売する等、新しいビジネスモデルに挑戦し、実際にお客さまの反応も確認しながら、その事業の実証を進めていくことをミッションとする」

――グループ内新規事業の実証を行う「パッチワークキルト株式会社」を設立(ハウス食品グループ本社 プレスリリース, 2023年1月)

第三に、 CVCファンドによるフードテック投資 を並行して展開している。2018年に設立した1号ファンドに続き、2023年には 50億円規模の2号ファンド も設立。シコメルフードテックなどへの出資を通じて、食と健康の交差点にある革新的企業とのシナジーを追求している。

代表的な事業事例の深掘り

Kidslation(キッズレーション) — 育児経験から生まれた冷凍幼児食

「Kidslation(キッズレーション)」 は、GRIT第1期から生まれた冷凍幼児食のECサブスクリプション事業である。 1歳半〜6歳向け の栄養バランスに配慮した冷凍食品を開発し、定期配送で販売する。法務部出身の社員が自らの育児経験から着想し、「子どもとの時間を食事の準備に奪われる」というペインを解決するために事業化に至った。

「偶然にも育児の悩みを解決する2つの事業がスタートした。いずれもハウスの既存事業とは異なる新たな仕組みを用いて製造・販売を行う」

――ハウスが冷凍幼児食と食品自販機に参入する理由(Impress Watch, 2023年7月)

2025年にはECサイトを全面刷新し、冷凍幼児食2品のリニューアルと新商品1品の投入を実施した。アルファ版での顧客発見から得た声をもとにコンセプトを改善し、商品の確度を上げていくプロセスは、食品メーカーにおけるリーンスタートアップの実践例として注目に値する。

タスミィ — 保育園に自販機を設置する新販売モデル

「タスミィ」 は、保育園に自動販売機を設置し、管理栄養士監修の パウチ入り惣菜 を販売するサービスである。1袋に大人1人前と子ども1人前の分量が入り、忙しい保護者がお迎えのついでに夕食を購入できる。

従来の食品メーカーのビジネスモデルとは全く異なる販売チャネルへの挑戦であり、保育園という「生活動線上の接点」を活用した発想が特徴的である。2024年10月には無人販売対応の専用什器を導入し、 全国100園への導入 を目標に導入園を拡大している。

スマイルボール — 10年超の研究が生んだ付加価値農業

涙の出ない玉ねぎ 「スマイルボール」 は、 10数年に渡る研究 によって生まれたハウス食品の研究開発力を象徴する事業である。辛み成分の発生を抑え、生食に適したこの玉ねぎは、既存の食品製造・販売の枠を超えた付加価値農業への挑戦である。長期の基礎研究と短期の実証型事業開発を併存させるポートフォリオ経営の一例といえる。

キーパーソンと組織文化

ハウス食品グループの新規事業推進において、藤井弾の存在は決定的に重要である。GRIT制度の発案者であり、パッチワークキルト株式会社の代表取締役社長を務める。本体の新規事業開発部にとどまらず、出島子会社の経営者として自ら実証の最前線に立つ姿勢は、イントラプレナーの理想形のひとつである。

「GRITでは、4年目以降の社員全員にアイデアを形にするチャンスが与えられている。参加者は半年ほどのプログラムを通じてアイデアを練り上げ、最終審査を通過すると事業責任者として実証に注力する」

――ハウス食品グループの新規事業開発の取り組みがおもしろい!(ウォーカープラス, 2023年)

食品メーカーの組織文化は、品質管理と安定供給を至上命題とするため、本質的に保守的な傾向がある。その中で「4年目以降の全社員が応募できる」というGRITの設計は、 挑戦のハードルを意図的に下げる 仕組みとして機能している。法務部出身の社員がKidslationを立ち上げたように、部署や職種に関係なく事業を提案できる文化は、多様なアイデアの源泉となっている。

成功と失敗から学べること

ハウス食品グループの取り組みから学べる最大のポイントは、 「出島」と「本島」の役割分担の明確さ である。パッチワークキルトという別法人を設立したことで、本体の品質管理基準や承認プロセスに縛られず、ECサブスクリプションや保育園自販機という従来の量販モデルとは全く異なるチャネルに挑戦できた。

一方で課題も明確である。Kidslationとタスミィはいずれも 事業規模としてはまだ小さく、ハウス食品グループの連結売上(約3,000億円規模)に対する貢献度は限定的である。出島で生まれた事業を「本島」の規模感に育てるスケールフェーズが次なる試練となる。

CVCファンドの投資先とGRITから生まれた自社事業とのシナジーをいかに生み出すかも、今後のテーマである。1号・2号ファンドの累計投資先から得た知見を社内に還元するメカニズムが確立されれば、オープンイノベーションと社内起業の好循環が期待できる。

今後の展望

ハウス食品グループは、GRITの継続的な運営とパッチワークキルトによる実証加速を両輪に、食品メーカーの枠を超えた「食の総合サービス企業」への進化を目指している。Kidslationの全面リニューアルとタスミィの全国展開は、その第一歩である。

50億円規模のCVCファンド2号 による外部投資も本格化しており、シコメルフードテックやビー・ケースなどフードテック領域のスタートアップとの協業が進む。食品メーカーの技術力・ブランド力と、スタートアップのスピード・テクノロジーの掛け算から、新たな事業モデルが生まれる可能性がある。

カレーに次ぐ柱をどう作るかという構造的な問いに対して、ハウス食品グループはGRIT・パッチワークキルト・CVCという3つの手段で挑んでいる。食品・消費財メーカーにおける新規事業開発のモデルケースとして、今後の展開が注目される。

関連項目

成功の鍵

1

実証型の事業開発(行動主義)

机上の事業案ではなく、実際の顧客反応で語る。小さな実験を設計し、リアルなデータで社内の信頼を獲得する

2

出島子会社「パッチワークキルト」による迅速な意思決定

本体の承認プロセスに縛られず、代表の判断でスピーディに実証を開始できる体制を構築

3

CVCと社内公募の両輪

GRITによる社内起業と、CVCファンドによる外部スタートアップ投資を組み合わせた多面的なイノベーション推進

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