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事業会社

大東建託

大東建託 ロゴ

Daito Trust Construction Co., Ltd.

建設・不動産大手。起案者に寄り添う事務局運営と「コア領域半分」戦略で社内ビジネスコンテストを事業創出の源泉に変革。

企業概要
企業名
大東建託
業種
建設 / 不動産
所在地
東京都港区
創業
1974年
公式サイト
www.kentaku.co.jp

新規事業の歴史

History & Evolution

2019

「新5ヵ年計画」発表

賃貸住宅専業から「生活総合支援企業」への転換を宣言。DX戦略と新規事業創出を経営の両輪に据える

2020

社内ベンチャー制度「ミライノベーター」開始

初回募集で451件・313名が応募。グループ全社員を対象とした公募型プログラムとして始動

2021

第1号案件「いい部屋Space」の実証実験を開始

DX認定事業者の認定取得。テレワーク向けマルチスペースレンタルの検証を本格化

2022

「いい部屋Space」「CODD」が事業化を達成

ミライノベーター初の事業化。賃貸住宅向けDIYキット販売「CODD」も続く

2023

累計5回の公募を実施

応募事業案が累計942件・最終審査通過15件に到達。制度の継続性を実証

2024

第6回公募を実施。「DAITO Group VISION 2030」推進

累計1,300名以上の社員が新規事業に挑戦。DX戦略を改定し生活総合支援企業への転換を加速

大東建託の新規事業の歴史 — 時系列で全体像を把握

大東建託は 1974年 に創業し、賃貸住宅の建設と一括借上(サブリース)を主力事業として成長してきた。 管理戸数は約120万戸 を超え、賃貸住宅管理業で国内最大規模を誇る。しかし国内の人口減少と住宅着工件数の長期的な減少トレンドは、既存事業への依存リスクを顕在化させていた。

転機となったのは 2019年の「新5ヵ年計画」 の発表である。賃貸住宅専業から総合賃貸業を核とした「生活総合支援企業」への転換を宣言し、DX戦略と新規事業創出を経営の両輪に据えた。この計画のもと、 2020年度に社内ベンチャー制度「ミライノベーター」 が誕生する。

「初年度となる第1回の定時募集(2020年4〜6月)では、予想を大きく上回る451件(提案者313名)の応募が寄せられた」

――社員と会社の成長につなげる社内ベンチャー制度「ミライノベーター」(大東建託 プレスリリース, 2021年9月)

「熱い志と事業アイデアがあれば、あなたも社長になれる」をキーメッセージに、グループ全社員を対象とした公募型プログラムとして設計された。書類審査、プレゼンテーション審査、PoC(実証実験)、事業化提案という段階を経るステージゲート型の仕組みである。

過去5年間で 6回に及ぶ公募 を実施し、 累計1,300名以上の社員 が新規事業創出に挑戦している。最終審査を通過した起案者は事業戦略部に所属し、自ら事業責任者として実証実験を推進する。建設・不動産業界の「現場主義」の文化のなかで、これだけの社員が手を挙げる制度を構築した点は特筆に値する。

新規事業戦略の特徴

大東建託の新規事業戦略は、「起案者ファースト」と「外部知見の積極活用」を両軸とする独自のアプローチを特徴としている。

第一に、事務局の役割を根本から再定義した。事業戦略部イノベーションリーダーの遠藤勇紀「事務局は、誰よりも起案者の味方であれ」 という信念のもと、応募段階での心理的ハードルを徹底的に下げた。専門用語や横文字を極力排除し、過去の通過者がワークショップ講師を務める「OB講師制度」も導入している。

「外部のプロだと解像度が合わない。同じような解像度の人、つまり実際にコンテストを通過した社員が教えるのがベスト」

――大東建託のキーマン登場 — 圧倒的な社内新規事業制度について(XAOS JAPAN)

第二に、建設・不動産のコア領域とそれ以外の領域をバランスよく採択する 「コア領域半分戦略」 を取っている。既存アセットの活用と業界の枠を超える挑戦の両方を促進することで、イントラプレナーの多様な発想を受け入れる土壌を作った。

第三に、外部審査員として 『起業の科学』著者の田所雅之氏が3期連続で参加 している。スタートアップの仮説検証メソッドを社内ベンチャーに還元し、プログラムの質を底上げしている。第四に、事業化した案件はグループ内の最適な会社へ移管する仕組みを整え、事業シナジーを最大化しながら継続性を担保している。

代表的な事業事例の深掘り

いい部屋Space — ミライノベーター第1号の事業化

「いい部屋Space」 は、ミライノベーター第1回公募から生まれた初の事業化案件である。テレワーク向けの個室を中心としたマルチスペースレンタル事業で、 2021年2月に実証実験を開始 し、約1年の検証を経て 2022年3月に事業化を達成 した。

「社内ベンチャー制度『ミライノベーター』から初の事業化。マルチスペースレンタル事業『いい部屋Space』が本格始動」

――社内ベンチャー制度「ミライノベーター」から初の事業化(大東建託 プレスリリース, 2022年3月)

防音室、会議室、配信スタジオなど多様なニーズに対応する空間を提供している。大東建託リーシングが管理する店舗との併設モデルを採用し、練馬・八千代・新潟・横浜北山田・柏と拠点を拡大した。大東建託が持つ 約120万戸の管理物件ネットワーク という既存アセットを新たな収益源に転換した好例である。

CODD(コッド) — 賃貸住宅の制約を逆手に取ったDIY事業

「CODD(コッド)」 は、賃貸住宅でも挑戦しやすいオーダーメイドDIYキットを販売する事業である。「シンデレラフィット・オリジナル・デザイン・DIY」の頭文字から命名された。賃貸住宅の「原状回復」という制約を逆手に取り、 約400点の商品 を展開している。

「コア領域半分戦略」の典型例であり、建設・不動産という既存領域の知見を活かしながら、EC販売という新たなビジネスモデルに挑戦した。入居者が自分の部屋をカスタマイズできる体験価値は、賃貸住宅の差別化にもつながっている。

Unitoとの協業 — 外部連携による新賃貸モデル

スタートアップとの協業にも積極的で、住まいのサブスクリプションサービス「Unito」との連携では、大東建託の管理物件を活用した新たな賃貸モデルの検証を進めている。オープンイノベーションの実践として、社内公募と外部連携の両輪で新規事業を推進する姿勢が表れている。

キーパーソンと組織文化

ミライノベーターの成功を語る上で、遠藤勇紀の存在は欠かせない。事業戦略部イノベーションリーダーとして制度設計から事務局運営まで一貫して担い、「起案者の味方」という事務局の姿勢を組織に浸透させた人物である。

「事業起案者の『どうしても続けたい』という強い想いがポイントになり、グループの中で最も適した会社へ事業を移すことで、事業シナジーの道筋をつけ、事業継続を実現している」

――社内イノベーションを”超加速”させる「ミライノベーター」(KENTAKU Eyes, 2024年4月)

建設・不動産業界は、現場で建物を建て、管理し、入居者にサービスを届ける 実務中心の組織文化 を持つ。「新規事業を考える」こと自体が異質な行為と見なされがちな環境である。その中でミライノベーター通過者がセミナーやワークショップの講師を務め、 過去の挑戦者が次の挑戦者を育てるエコシステム が形成されている点は、組織文化の転換を象徴する。

グロービス学び放題の法人導入など人材育成にも投資し、事業構想力の底上げを図っている。建設・不動産という保守的な業界において、挑戦を称える文化を根付かせた意義は大きい。

成功と失敗から学べること

ミライノベーターの最大の成果は、制度の「継続性」にある。多くの企業で社内ビジネスコンテストが1〜2回で形骸化する中、大東建託は 6回の公募を重ね、累計1,300名超の参加者 を集めている。制度を止めない仕組みとして、OB講師によるナレッジの循環と、事務局の「伴走者」としての姿勢が機能している。

一方で、 累計942件の応募に対して最終審査を通過したのは15件(約1.6%) であり、大多数の提案は途中で脱落する現実がある。しかし大東建託は「不採用」を失敗と捉えず、挑戦した社員の成長という「副次的な成果」を重視する姿勢を明確にしている。この考え方は、新規事業提案制度の運営において重要な示唆を与える。

事業化後のスケールが次なる課題である。いい部屋Spaceの全国展開は緒に就いたばかりであり、管理物件ネットワークの活用度合いが成長のカギを握る。制度から事業が生まれた後に、いかに「成長の壁」を越えるかは、バレー・オブ・デスを乗り越える問いとして多くの企業に共通するテーマである。

今後の展望

大東建託は 「DAITO Group VISION 2030」 のもと、賃貸住宅事業を核としながらも「生活総合支援企業」への進化を加速させている。2024年にはDX戦略を改定し、「新しいくらしの未来を届ける」をテーマに掲げた。 既存事業のDX化、コア周辺事業の拡充、まちの活性化・地方創生 の3軸で事業ポートフォリオの拡大を目指している。

ミライノベーターの累計応募数と事業化実績は年々増加しており、制度の形骸化を防ぐ仕組みが機能している。今後の焦点は、事業化に至った案件のスケールをいかに実現するかにある。いい部屋Spaceをはじめとする事業化案件が、大東建託の管理物件ネットワークを活用して全国に展開できるかが問われる。

DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略との連携も重要なテーマである。DX認定事業者として「デジタルで新しい生活支援サービスをクリエイション」を掲げており、テクノロジーを活用した新サービスの創出が期待される。建設・不動産業界における社内起業制度のモデルケースとして、ミライノベーターの進化は今後も注目に値する。

関連項目

成功の鍵

1

起案者ファースト事務局

事務局を「審査者」から「伴走者」に再定義し、横文字排除やOB講師制度で心理的ハードルを徹底除去

2

コア領域半分戦略

建設・不動産の既存アセットを活用する案と、業界の枠を超える案を半々で採択し、ポートフォリオを分散

3

外部知見の組み込み

田所雅之氏を3期連続で外部審査員に招聘し、スタートアップの方法論を社内ベンチャーに還元

4

グループ横断の事業移管

最適なグループ会社へ事業を移すことで、事業シナジーの道筋をつけて継続性を担保

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